医院開業
医院の開業にはあまりにも多くの判断、処理をしなければならないことが存在します。
診療圏調査、不動産の探索・交渉・契約、事業計画の作成、開院資金の借入、医院の設計・施工、医療器械・設備の選定・購入、リース契約、行政への開院手続き、広報・HPの作成、スタッフの募集・採用、社会保険・健康保険の手続き、スタッフ教育、レセプト請求・・・・
考えるだけでも気が重くなってしまうほどです。これをたった一人で処理するのはいかに優秀なドクターといえども困難極まります。たとえ処理しきれたとしてもその品質はどうでしょうか?
私どもは今までに数多くの開院の事例を見て、トラブルに巻き込まれたドクターとお会いしてまいりました。医院の設計に不備があり、早々にリフォームをされた先生、施工費が当初予算から多額になってしまった先生、不要な医療機器を購入してしまいホコリをかぶせてしまった先生、通常より割高な器械・設備を購入してしまった先生、スタッフの手続きに不備があり開院早々退職者を出してしまった先生、資金不足になってしまった先生・・・・
最悪は、短期間で医院を閉鎖しなければならなくなった先生もいらっしゃいます。これからは医院経営もますます厳しくなる時代です。こんな悲劇は決して起こしてはいけません。
私どもは自分が医院を経営する気持ちで先生方をサポートしてまいります。現実にマッチした事業計画・資金計画の作成が最重要です。資金が不足することが最大のリスクだからです。施工や物品購入などお金が絡む場合には常に事業計画・資金計画とすりあわせをしながら検討をしていただきます。場合によっては先生のご要望に反対を言わせていただくこともあるかもしれません。このような場合でも先生と話し合いをしながら納得をしていただきながらお手伝いをさせていただきます。
開業まめ知識
医院経営は院長先生の経営理念やコンセプトによって成否が決まるといっても過言ではありません。開院ラッシュで数百メートル内に複数の医療機関がひしめく時代となった今、「地域の患者さんに選んでいただき、成功する医院」をつくるには先生の診療技術はもちろん、経営手腕も大事な要素となります。
経営理念やコンセプトのない企業は存在しません(あっても継続できません)。医院の経営がどの方向に向かっていくのかわからなければ、スタッフのモチベーションも上がりません。まずは目指す「方向」を決めてスタッフ共々ベクトルをひとつにしましょう!
コンセプト作りのポイントとしては「どのような患者さんの来院を考えているのか、医院の特徴は何か、5年先、10年先の将来像、スタッフに課す目標(スタッフの3年像・5年像)」などをじっくりと考えてみるとよいでしょう。
医院の特徴の中で、院長先生の専門分野が大きなウェイトを占めます。専門医資格の広告が可能となり、患者さんも選択の基準とすることが多いので専門医を取得してからの開業をするとさらに特徴がわかりやすくなります。
開院の時期は診療科目によって時期を検討するとよいでしょう。状況にもよりますが、内科・小児科・耳鼻科は9月~10月、皮膚科・眼科は5月~6月ころがよいでしょう。
コンセプトが決まったら、これを具体的な事業計画・スケジュールに落とし込んでいかなければなりません。その中で重要なことは「開院する場所、現実的でリスクの少ない事業計画(特に資金計画)、開院時期(現在の勤務先への退職願いの時期など)」などです。
特に現在の勤務先をいつやめるのか、いつ退職願を出すのかは重要です。勤務先とのトラブルや、無収入の時期が長期化することは避けるように計画しましょう。また、開院することはむやみに周りの人に話すことは慎みましょう。様々な業者の方から本人が知らないうちに勤務先などにその情報が伝わってしまうことも多々見受けます。
開業地は医院が成功するかどうかを決定付ける大きな要素の一つです。しかし医院数が全国で10万件近くになった現在、住民が多く競争の少ない場所を見つける事は困難な状況になっており、今後は医院の専門性をアピール出来る、他院との差別が図れる、集客力がある施設の近く、病診連携が取れるなどの場所を探すことが重要となってきます。
開業形態
①テナント
②クリニックビル/クリニックモール/クリニックビレッジ
③一戸建て
④一戸建(レント方式)
それぞれメリット・デメリットがありますのでご自身の目的や自己資金、地域性、診療スタイルなどの諸条件を考えて検討しましょう。
診療所に適した物件とは
①客力のある駅・商業施設・公共施設・商店街の近隣地
②人通りの多い通りに面している場所
③看板などが遠くからも認知できる場所
④間口が広く、入り口サイドのガラス面が多い場所
⑤駐車場が有り、駐車場に入りやすく駐車しやすい場所
開業候補地が決まったら、その候補地がどれだけ開業に適しているか必ず診療圏調査を行いましょう。診療圏調査によって、開業候補地で開業した場合1日どれだけの外来患者数が見込めるか、エリアのポテンシャルが算出出来ます。
一つの医院であらゆる医療サービスに対応しようとすれば膨大設備・費用が必要となり過剰投資になりかねません。逆にクリニックの専門性や他院との差別化のために必要な設備も出てきます。経営者としての立場で、クリニックのコンセプト・市場性・事業予算から慎重に設備投資を検討しましょう。
開業資金をすべてご自身の預貯金でまかなえる人は多くありません。各金融機関には様々な開業融資制度がありますので、条件を確認して有利なものから資金を調達しましょう。
金融機関
①日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)
②都道府県の制度融資
③市区町村の制度融資
④医師会提携融資
⑤社会福祉医療事業団
⑥民間金融機関
⑦リース会社など
担保の有無、保証人の有無、十分な自己資金、金利、融資実行時期などそれぞれ条件が変わってきますの でご自身の条件に合わせて選択しましょう。また親族から資金援助を受ける場合は、後々贈与と見なされないよう対処しましょう。
金融機関に借入を申し込む時には、下記のものが必要となることがありますので、準備をしておきましょう。(借入先によって必要書類が異なる場合があります。)
必要書類
①事業計画書~意欲的なもの
②診療圏調査(事業計画の裏付け)
③確定申告書(源泉徴収票)
④医院設計図
⑤導入機器・設備
⑥施設・機器購入見積書
⑦広報計画
⑧医師免許証
⑨運転免許証
⑩ローン返済計画書(現在借入中のもの)など
資金借入を申し込んだ場合、自宅などのローンの残高が大きい、担保設定ができない場合などには、借入そのものを断られる場合もあります。
医院建築の設計・施工は患者さんやスタッフの導線や医療事故の防止、プライバシーの保護など専門的知識が必要です。また診療科目によっても必要な広さ・明るさ・配置・電気容量などが変わってきます。医療施設の設計・施行の経験が豊富で、同じ診療科目の実績のある業者を選択することが肝要です。